フィールドワークス 横断測量システム運用説明書
【概要】
フィールドワークス型記録解析アルゴリズムを応用した横断測量システムです。
【特徴】
・ソキアPOWER SET SETX SRX FX 系に搭載されているSDR系観測プログラムの放射観測を利用した、外部デバイス不要の横断測量システムです。*1
記録データを独自のアルゴリズムで解析出力するため、トータルステーションに特別なソフトを組み込む必要がなく、外部デバイスも必要ありません。
・記録データは通常の放射観測データですので、現地測量(平面測量)データと混在が可能です。
結線情報も記録可能です。断面データ上も結線されています。
・データは観測座標に基づいて解析します。
よって、右側断面・左側断面を現場で区別し記録する必要はありません。
・ポール横断の記録も可能です。
通常の比高比距離入力に加えて、勾配・斜距離入力も可能です。*2
・出力成果は、DXF断面データ・観測手簿・横断SIMAデータです。
・断面編集は任意の汎用CADによりDXFデータを使用する方法もしくは横断SIMAデータを任意の測量システムで編集する方法の二通りです。
・解析前に縦・横の縮尺を任意に変更できます。
・DXFデータは線色・レイヤ名・文字サイズ及び横比率の変更ができます。
加えて観測点の各々標高値も記載し、その小数点以下の桁数も変更可能です。
構造等の現地観測ノートも記載されますので、構造記号編集時に参照できます。
*1 記録するための条件として、点名欄に英数字・半角カナが入力できること。
備考欄の項目があること。観測座標がそのまま出力されること。
トータルステーションから出力されるデータはテキスト形式(カンマ区切りのCSV形式)であること。ソキアSDフォーマットであれば、バージョンによらず運用可能です。
また、この条件をクリアしているトータルステーションであれば、エクセルによる簡易な変更により運用可能です。
*2 中心点に対して離れていくのか近づいていくのかにより、比距離・比高及び勾配・斜距離の符号を変える必要あります。
また、ポール横断の記録は必ず放射観測点からでなければなりません。
【解析の概要】
距離の計算
中心点XY座標(計算値)と観測点XY座標の座標変換により水平距離を算出しています。
よって、観測時に使用する与点は正規のXYZ座標を持った点でなければなりません。
※ 観測点間の累加距離ではありません。中心点と各々観測点を個別に計算しています。
標高値
観測標高をそのまま使用します。よって、観測時に使用する与点は正規のXYZ座標を 持った点でなければなりません。
また、器械高も正確に計測し入力してください。
ポール横断
確定された観測点の距離と標高値より計算しますので、必ず放射観測点の後に記録してください。(初点からいきなりポール横断の記録というのはできません)
通常のポール横断に加えて、「勾配」+「射距離」の入力も可能です。
方向杭や左右断面の扱いについて
本観測方法では、すべて観測座標値によって解析しますので、「方向杭から観測した断面」「中心点から観測した断面」を区別する概念はありません。
方向杭・控杭のデータ(直接水準測量による標高値を採用値とする場合など)は別途整理しておき観測データと一括して結合することにより、断面上に展開することができます。
また、中心点の右側左側の判別は、解析時に自動判別しますので、記録時に振り分けるという概念はありません。
出力される観測手簿及び横断SIMAデータの注意点
生の観測データに基いて出力しますので、CAD上で修正変更した箇所については反映されません。また、観測手簿については通常のテキストデータですので、WORDなどのワープロソフトで読み込んで体裁を整えてください。
【測点名欄入力の規則概要】
1.先頭に必ず「オ」を入力すること。
2.中心点名はポイントやスペースを含めて正しく入力すること。
3.最後に「C」を入力すること。
【備考欄入力の規則概要】
1.「A」で結線はじまり。「B」で結線おわり。それ以外の文字は「X」を除き継続点もしくは単独点として扱われる。
その後は「P」「V」を除き何を書き込んでも解析上問題はない。※ 結線命令文字列は任意の文字に変更できます。
2.「AP」「BP」は通常ポール横断である。この二文字の後は必ずcm単位で+000−000という書式で入力すること。
その後は何を書き込んでも解析上問題ありません。
3.「AV」「BV」は勾配・斜距離のポール横断である。
この二文字の後は必ず三桁の勾配とcm単位で+050−350という書式で入力すること。
その後は何を書き込んでも解析上問題ありません。
4.観測データを無効にしたいときは、先頭の文字を「X」に訂正してください。※ 任意の文字に変更できます。
以上の入力規則について詳細に説明します。
【横断観測記録規則詳細について】
点名欄の入力規則
横断データであることを示す文字 + 測点名 + 数値自動繰り上がりを防止する文字
例:中心点測点「NO1」の断面を測量するとして。
オNO1C と、入力します。
半角カナの「オ」を先頭につけることにより、この観測値は横断データであることを示します。
これは変更不可です。必ず「オ」を付けてください。
引き続き測点名を入力します。
最後に数値繰り上がりを防止する文字「C」を入力します。
この点名が同じ観測データはすべて同一断面のデータと認識されます。
※ 数値の繰り上がりを止めるコマンドを持ったプログラムもありますが、古いものはこれがないものもありますので、必ず「C」を付けることに決めています。
※ 測点名にポイントを付ける付けないも重要です。解析時に文字列を厳密に判別しています。
例えば「NO1」と「NO.1」は別の測点として解析されますので注意が必要です。
備考欄の入力規則(通常観測の場合)
結線の始まり終わりを示す文字 + 構造の略号もしくは任意の文字列
例として AISAE と入力したとします。
英数字「A」は結線始まりを示し「B」は結線終わりを示します。
次の英数字は構造略号を入力します。「IS」は石積スタート、その次の「AE」はアスファルトエンドを示します。この略号は解析プログラムにおいて任意に変更できます。
※ 本システムではこれにより構造記号をDXFデータに書き込む機能はありません。編集時に参照するためのものとして入力します。
他の使用法として、横断SIMAデータを出力するときに、この文字列を変化点測点名として記入することが可能ですので、お使いの測量システムにおいてこれを参照し自動的に構造記号を展開する事ができるものであれば、その文字列を入力することによって実現可能となります。
なお、その場合入力文字列を正しく覚えるか一覧表などを参照しながらの作業となります。
観測記録後に視準高の間違いなどの事情により、観測データを削除したい場合はトータルステーションの訂正コマンドにより、先頭の文字を「X」に変更することによって解析時にその測点を無効とすることができます。
※解析時にこれを補完するコマンドがあります。
※ 観測データを削除ができないプログラムが多いので、この機能を持たせてあります。
誤って必要なデータまで削除してしまうリスクを考慮すると、安易に削除せずこの機能を利用したほうが安全です。
備考欄の主な入力例を以下に示します。
A 構造のない変化点で結線始まり。もしくは結線中。
B 構造のない変化点で結線終わり。もしくは結線不要な単独点。
AAA アスファルト
ABS ブロックスタート
ACS コンクリートスタート
AII 家当たり
AFF フェンス
AGR ガードレール
AGP ガードパイプ
備考欄の文字は結線命令文字1文字以後は何を記載してもかまいません。DXFデータ上にすべて展開されます。
規則を持たせるのは観測手簿に記載する文字変換のためです。
※ 要注意事項 通常観測において結線文字の後に「PとV」は付けないでください。ポール横断データと誤
認識します。
備考欄の入力事例
下図のような地形の断面の場合、備考欄の入力は図面左端から観測していくとすれば、
A 結線始まり
AIS 石積スタート
AIE 石積エンド
AIS 石積スタート
AIE 石積エンド
AGRAS ガードレール アスファルトスタート
・
・
・
・
・
ABE ブロックエンド
AFF フェンス
BII 結線終わり 家当たり
という感じで入力します。 器械点は中心杭に設置していますが、左右は気にしなくても構いません。
下図に基本的な観測の仕方と、文字入力例を示します。
※下図のように、方向杭が直接見通せる現場は、器械を測点ごとに移設しなくても観測できます。
備考欄の入力規則(ポール横断の場合)
まず、ポール横断の入力時はトータルステーションの観測ボタンの中で「測角」を押して距離入力状態にします。
座標を記録するわけではないので測点名入力欄は先に記述した規則に従い、備考欄の入力を行います。この規則は、
結線の始まり終わりを示す文字 + ポール横断データであることを示す文字 + 構造の略号もしくは任意の文字列
です。
さて、ポール横断の入力規則は2種類あります。
1つは通常の比高比距離の入力方法ともう一つは勾配と斜距離を入力する方法です。
通常の比高比距離を入力する場合(中心点から離れていく方向に測量するとして)
例: AP+100−150IE
この例では、「 結線始まりもしくは継続 1m行って 1.5m下がり 石積みエンド 」となります。
※ 比高・距離の入力は必ずcm単位で入力してください。また、桁数も各々符号プラス3桁で入力してください。
解析時は文字数を厳密にカウントしていますので、これを間違えるとエラーとなります。
0.5mを入力するときは「050」と必ず50の前に0を入れてください。この規則は勾配・射距離入力においても同じです。
同じ点でも中心点に近づく方向に測量していくときは、
AP−100+150IE
と、入力します。
汎用CADで編集する場合は、構造の始まり終わりは編集者がわかればよいのでエンド・スタートは気にしなくてもかまいません。
また、オーバーハングしている断面を入力する場合も符号を変えることにより表現されます。
勾配と斜距離を入力する場合(中心点から離れていく方向に測量するとして)
例: BV+050+450BE
この例では、「 結線終わり 5分の上がり勾配で斜距離4.5mのところがブロックエンド 」となります。
5分勾配とは、0.5m行って1.0m上がり、もしくは下がりの勾配を示しています。
この入力規則も中心点から離れる場合と近づく場合とで、勾配・斜距離の符号を変えます。
BV−050−450BE
※ 本システムでは、ポール横断の入力はあくまでも補完的なものです。
なぜなら入力が煩雑であること、昨今のトータルステーションでは測距速度が速いことなどの理由に加え、ポール横断をするよりデータの整合頼性が向上(平面図や既存資料との)するためです。また作業効率も目に見えて下がることはありません。
【観測データの点検方法】
・観測データは通常の放射観測点と同じなので、フィールドコンバータで平面図のDXFデータにて出力できます。
・この平面データを線形図及び横断方向線のデータや、平面図のデータと重ねることにより、横断方向の間違い、標高の間違い(視準高入力ミス)、測点名の入力ミス、測り忘れなどを簡単に発見できます。
・測点名の入力ミスは、その点の標高値や備考欄文字列を参照すれば、生データ上での一括修正が可能です。
たとえば「NO3」とすべきところを前測点名がそのまま入ってしまっていた場合などは、テキストエディタなどの「検索置換」機能を使って、その箇所を修正すれば正規の観測データとなります。
・横断方向を間違っていた場合は残念ながら再測です。
山地斜面などは横断方向が10度程度ずれていても断面上では間違いに気づきにくいものです。
本システムならそのような場合でも容易に発見可能ですので、成果の信頼性向上に役立ちます。
・標高値が平面図と見比べて明らかにおかしい所は、訂正可能な場合もあるかもしれませんが、現地で再測点検したほうがよいでしょう。
※ ポール横断のデータはデータの性質上平面には展開されません。断面上で確認点検してください。
【その他の注意事項】
※ 観測順位は結線データ解析に直結しますので、表計算ソフトなどで編集時に観測順位(データの並び替え)の変更をしてはいけません。結線が支離滅裂になります。
※ 出力データには必ず「座標」を入れてください。観測値や換算値、平均値だけでは解析できません。
※ 一般の測量計算ソフトで出力された計算値では、備考欄データが弾かれますので、本システムでは運用できません。
必ず本体から直に出力した座標データを使用してください。
ただし、点と標高値だけ表示されればよいのであれば、SDフォーマット形式に変換後解析可能です。(SIMA座標からSDフォーマットに変換)
※ ソキアSDR8は測点名・備考欄共に半角16文字までという文字入力制限がありますので、あまりに長い測点名や備考欄への記録はできません。通常この制限による不都合は現在のところありません。
※ ソキアSDR7(初期型)は測点名半角8文字の文字入力制限がありますので、省略化が必要な測点名が出てきます。
備考欄は16文字まで入力可能です。
※ 放射観測時にオフセット観測を使ったデータも通常データと同様に解析できます。
※ どのメーカーの電子野帳も万全なものは存在しません。観測中、切りの良い所で適宜USBメモリーなどにデータ出力するなどバックアップをお忘れなく。
【参考資料】
SDフォーマット(座標)の書式 (CSV形式)
起源コード , 測点名 , X座標 , Y座標 , Z座標 , 備考
E30TP,オNO2C,1000.000,1500.000,100.000,AISBE
本システムで認識する起源コード
E30TP : 現地観測座標データ
E30OS : 現地観測オフセット座標データ
E30KI : キーボードインプット座標データ
※ E30×× の起源コードはすべて認識します。それ以外は無効です。
※ エクセル等でCSV出力すると、カンマの前後にスペースが入るので、出力後テキストエディタで「検索置換」機能によりスペースを一括削除すること。
※ 一般の測量システムで放射計算後、観測の順番に変わりがなければ、先頭の備考欄に「A」をつけると、概ね正しい結線となる。
ただし、ポール横断のデータは無視される。
なお、使用する測量システムによっては同一点名だと次々任意文字列を自動付加するものがあるので、このような場合は運用できない。
計算書そのものをテキスト形式で出力できるソフトであれば編集することによって運用可能な場合もある。
【横断システムに必要な中心点データの作成(手作業で作成する場合)】
※ 縦断データ作成システムで生成できますが、縦断図は他のシステムで作成するので不要、という場合はこの方法で中心点データを作成します。
エクセルなどの表計算ソフトで下記の並びに従って作成します。元データはSIMAなどテキストデータを流用します。
※ 接線方向角が不要な場合です。この形式だと次点との座標による方向角算出を行います。
通常の路線測量の場合はこの形式を用います。
中心点名 + X座標 + Y座標 + 単距離 + 地盤高 + 杭天高
NO1,1000.000,1500.000,0.000,100.000,100.000
※ 接線方向角が必要な場合です。この形式では次点との座標による方向角算出を行いません。
災害現場や、1断面のみの測量など変則的な測量を実施した時に用います。
中心点名 + X座標 + Y座標 + 単距離 + 接線方向角(ラジアン) + 地盤高 + 杭天高
NO1,1000.000,1500.000,0.000,0.258,100.000,100.000
・カンマ区切りのCSV形式テキストデータです。
・上記の例は1測点分です。測点分だけ行数を順次増やします。
・生成するDXFデータはこの並びに従って縦に断面を並べています。
・測点名は横断観測データの測点名と厳密に整合させてください。
横断データ 中心点データ 横断データ 中心点データ
例 : オNO1C → NO1 オKE2-1C → KE2-1
※中心点名は横断データの「オ」と「C」を除いたもの。
・単距離は、観測手簿に記載するために設けているので、不要であれば「0.000」を入力しておいてください。
・接線方向角は、断面データの左右判別に使用するだけなので、厳密な数値入力は必要ありません。10度単位程度で断面方向の方向角をラジアンで入力してください。
RAD = 方向角/(180/Π)
・このデータをエクセルなどの表計算ソフトで作成し、CSV形式で出力します。出力後、中心点名の前後にスペースが無いことを確認して下さい。入っていると解析時に誤認識します。
エクセルでの作成状況
方向角がある場合です。不要な場合は方向角の項目を削除します。
※ 解析ソフトでの読み込み時デフォルトファイル名は「CXY.TXT」ですが、これは便宜上定めているだけなので、名前や拡張子に縛りは設けていません。が、間違い防止のため固定しておいたほうが良いと思います。